天妃様行列(てんぴさまぎょうれつ)
日本と台湾が融合した、世界でここだけの神事:大間の天妃様行列
天妃様は、中国沿海部や台湾、東南アジアを中心に、航海・漁業の守護神として信仰を集めている道教の女神さま。媽祖(マーズー)と呼ばれ、実に20ケ国以上の国に約2億人以上の信者がいると言われています。2009年には「媽祖信仰」がユネスコの無形文化遺産にもなったほど。とりわけ台湾の天妃様行列である「媽祖巡礼」は、延べ百万人以上の巡礼者たちが9日間にも渡って330キロを歩くという台湾最大規模の宗教イベントなのです。 その異国の行列が、大間では大漁祈願祭が行われる海の日に執行され、日本の神事である稲荷神社の神楽や神輿と融合。2つの文化が溶け合った世界でここだけの神事として定着したのです。
天妃様は、江戸時代から祀られていた!
大間に天妃像を祀る祠(ほこら)が創建されたのは、1696年(元禄9年)の江戸時代。当時の名主であった伊藤五左衛門が、海上での危機を助けられ、水戸藩那珂湊より遷座したという説が有力です。その後、明治に入ってから大間稲荷神社に合祀され、1996年、遷座から300年の記念となるのをきっかけに、天妃様行列が執り行われることに。当時の大間町観光協会・大見光男会長の発議によるものでした。さらに翌1997年には、台湾の媽祖信仰の総本山である北港朝天宮と大間稲荷神社が姉妹宮となり、以来、北港朝天宮の協力を得て、毎年海の日に行列が執行されるようになったのです。 この天妃様行列が始まった記念祭の年を境に、それまで30年近くも続いてきたマグロの大不漁が、豊漁期へと一転。まさしく天妃様のご加護ではないかと囁かれています。
天妃(媽祖)様は、実在していた女性
960年、中国福建省の湄州(びしゅう)島生まれ。幼少の頃からすでに聡明で、15歳の時には儒教・仏教・道教という3つの経典を読み尽くした天才だったそう。16歳から人間離れした力を発揮するようになり、21歳の時には人々を飢餓から救いました。悪さをしていた順風耳と千里眼を懲らしめて従えるようになったのは23歳の時。そして28歳になった時、泣いて引き止める家人に別れを告げ、「人々を救わん」と海上を歩いて神になったそうです。その後、台湾海峡でたびたび起こる海難事故でも人々を救い奇跡を起こしました。中国沿海部と台湾にあるおびただしい数の媽祖廟は、人々がいかに媽祖様を崇拝してきたかを物語っています。日本の媽祖廟は沖縄、九州に集中しており、東日本は神奈川、茨城、そして東北地方は大間にだけ祀られているのです。
行列を盛り上げるのは、キャラの立った神々
大間の天妃様行列を担ってくれているのは、大間稲荷神社の別当や氏子、大神楽会、町や漁協、観光協会の関係者たち、優秀者として表彰された漁師たち、天妃様を護る神々の役割は商工会青年部、そして中学生は龍踊り、漁協女性部は流し踊りをご披露します。行列の中でひときわ目を引くのは、天妃様のお供をする神様たちでしょう。商工会青年部の若者たちが、真夏の暑さと重さに耐えながら、汗だくになってこの個性溢れる神様たちを演じます。ぜひ、ご注目ください。
- ①仙童(せんどう)
- 天妃様が来たよと知らせる役目 活発でいたずらっ子、福を人に与える
- ②哪吒太子爺(なたたいしや)
- 元気モリモリで、やんちゃ 台湾の行列ではテクノ音楽でノリノリに踊る
- ③済公(さいこう)
- 肉を食べたり酒を飲むことを許され いつも酔っぱらっている
- ④土地公(とちこう)
- 地元の住民を守り、苦しんでいる人を助ける
- ⑤順風耳(じゅんぷうじ)
- あらゆる悪の兆候や悪だくみを聞き分けて、 いち早く天妃様に知らせる
- ⑥千里眼(せんりがん)
- 遠隔地の出来事を感知できる能力をもつ